オリジナル刺繍の豆知識【刺繍型(パンチ)編3】

オリジナル刺繍の豆知識【刺繍型(パンチ)編3】

刺繍の豆知識刺繍型編第3回目は、刺繍型(データ)とはどういうものなのか、また、刺繍型はどのように作るのか、
刺繍型(パンチ)のレベルと、その良し悪しについてお話しします。

刺繍型は針の動きを指示するデータです。
刺繍型専用のソフトを使用して作成します。刺繍をする前の元データは面ですが、実際のデータは糸の動きを表す線の集合体となっており、
繋がっているデータです。その刺繍型の指示によってコンピューターミシンの針が動いて刺繍をするわけです。

作り方は2つあります。

1. オートパンチ

⇒刺繍型専用ソフトの中にある、オートパンチ作成機能を使って作成する

2. マニュアルパンチ

⇒ ソフトを使用するものの、画像をトレースするようにすべて手作業で作成する
※パンチとは刺繍型(データ)の業界用語

ここで、マニュアルパンチとオートパンチの違いについて簡単にお話しします。

オートパンチ機能

元の画像データを刺繍ソフトがオートスキャン機能で読み込んで、刺繍の打ち込み方を自動で設定するものです。
刺繍型を作成する上で技術を必要としませんので、早操作を憶えてしまえば、く手間がかからず、誰でもできます。
但し、作成側のイメージ通りにできるかどうか別です。

マニュアルパンチ

文字通り、人の手で針の動きのデータを作成することです。
デザインの特徴と、加工する生地の特徴、生地自体の硬さや厚さ、出来上がりのイメージを人間が判断し、
データを作成します。よって、技術と経験が必要です。糸を打ち込み角度や幅、密度、生地の縮みを計算した補正もマニュアルで指示します。

マニュアルパンチは様々な条件に合わせて人の手でデータを作成するため、時間がかかりますが、技術の高い人間が作成すると出来上がりの質が高くなります。

オートパンチで作った刺繍型と、マニュアルパンチの違いは以下の画像でご確認下さい。

上がオートパンチで型を作成した刺繍、下がマニュアルパンチで型を作成した刺繍です。

画像をご覧いただくと出来上りの綺麗さは、一目瞭然ですね。

マニュアルパンチは人が花びら1枚1枚を別々のものと判断するため、1枚1枚と角度を変えて型を作成しています。

それに対して、オートパンチ機能を使って作成すると、5枚の花びらをすべて1つも固まりとしてソフトが認識したため、
針を打ち込む向きがすべて同じ方向であるのがお分かりになりますでしょうか。

そのため、花びらに対して光の当たる角度が一緒なので、反射によるまったく立体感がありません。

また、オートパンチの場合は、下の生地の色を考慮していませんので、
黒などの濃いめの生地の場合は、下の生地が出てしまい、本来の色よりと見え方が変わってしまいます。
マニュアルの場合は糸の色と生地色を判断し、下の生地色に負けないよう下打ちという事前に糸を打ち込むよう指示をしてデータを作成しています。

同じ糸色なのに、これだけ出来上がりが違いますが、
人間が時間をかけて行う作業なので、かかる時間によって刺繍型代がかかることになります。

刺繍型代は作業時間に比例します。
刺繍デザインが簡単で面積小さければ(針数が少なければ)、安くなりますが、

面積が広く、また柄が細かくなるとその作業時間も増えますので、高くなります。

また、マニュアルパンチは作成する人によって、打ち方が変わりますので、
作成者によって刺繍の出来上がり違ってきます。

よって、刺繍型のレベルがアップすると刺繍の出来上がりも綺麗になりますし、
経験値と技術の高い人が、手間暇をかけて作成する刺繍型はレベルが高くなるということです。

また、アルファユニでは原則的にはマニュアルで刺繍型を作成しておりますが、
それだけはなく、量産加工前に必ず、試し打ちをします。
そして、型の修正を加えた上で本番加工を行っております。

試し打ちをする理由は以下の通りです。

刺繍型(パンチ)データ上では問題なくても、生地との相性や生地色の影響、
また、パンチデータ上は問題なくても、実際に刺繍してみると隙間が空いてしまったり、逆に重なってしまったり、
生地と打ち込み角度によって実際の刺繍がゆがんだり、曲がったり、最後の縫い止めの位置による見栄えなど、
微調整をしないと完全なものにならないからです。

刺繍型代は、綺麗な刺繍をするための初期投資だと思ってください。
※次回以降刺繍型代は半永久的にかかりませんので。

次回に続く

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