刺繍糸のお話(素材と特徴について)
2024.11.07
今回はオリジナルスクラブの刺繍で使用している刺繍糸についてお話をしたいと思います。
刺繍糸は縫い糸とは違い、刺繍のために作られた刺繍に最適な糸です。
弊社が今回紹介するのは、手芸用の手刺繍用の糸ではなく、刺繍ミシン専用の糸となります。
また、スクラブや白衣などメディカルウェアは洗濯がハードなため、洗濯耐久性も大きなポイントとなります。
【刺繍糸に使用される素材と特徴について】
刺繍糸の素材はいくつかありますが、一般的に刺繍糸として使用されている糸は大きく2つの素材になっています。特徴については以下の通りです。
1 ポリエステル100%
メリット:高い張力、切れにくさ、高い洗濯堅牢度
デメリット:しなやかさが少なく硬い、熱に弱いためヒートカット時に使用できない
2 レーヨン100%
メリット:しなやかさがあり、風合いが柔らい、発色性(光沢感)が高いので仕上がりが綺麗
デメリット:洗濯堅牢度がポリエステル糸と比べて劣る、糸強度がポリエステルより劣る
上記以外にも、綿、ナイロン、アクリル、ポリ/ナイロンの混紡など、色々とありますが、上記の2つの素材で9割以上の刺繍がされていると言っても過言ではありません。
【刺繍糸の太さについて】
刺繍糸の太さは一般的に120D/2と75D/2の糸が多くの場面で使用されます。
75DのDとは「デニール」の略で糸の太さを表す単位で、数値が大きいほど太くなります。また、Dの後にある「2」については双糸2本を表しています。要するに75Dの糸を2本引きそろえて撚りをかけて1本の糸にしていることを意味します。
ちなみに弊社ではネーム刺繍についてはすべて75D/2の糸を使っています。細い糸の方が打ち込む本数が多くなり刺繍に時間がかかりますが、その分細かいところまで綺麗に表現できるからです。
デザイン刺繍についても、細い線、小さい文字は75D/2の糸を使用します。面を埋める場合は120D/2の倍の太さの糸で打った方がボリュームが出ますし、刺繍時間も抑えられます。アルファユニでは柄によって、綺麗に仕上げるよう75Dと120Dの糸を柄のパーツごとに使い分けをしています。
【刺繍糸のブランドとメーカーについて】
刺繍糸のメーカーは国内数社ありますが、どちらも糸製造を専業としている会社で、
代表的なブランド名および製造会社名は以下の通りです。
・キングスター(株式会社フジックス) 本社:京都府京都市 創業1921年(大正10年)
・パールヨット(パールヨット) 本社:東京都台東区 創業1931年 (昭和6年)
・ウルトラポス(オゼキ株式会社) 本社:愛知県名古屋市 創業1933年(昭和8年)
・ミサイルツル(株式会社ミナトヤ) 本社:兵庫県神戸市 設立1954年(昭和29年)
・エンゼルキング(中村商事株式会社) 本社:京都府京都市 創業1958年(昭和33年)
5社とも糸の製造販売会社として創業し、50年以上の歴史がある老舗企業ばかりです。
【各ブランドの糸の特徴について】
・キングスター
素材:ポリエステル100%糸のみ。
糸番手とカラー展開:75/2と120D/2 各600色
特徴・強み:創業は1921年と一番の老舗メーカー。
一般的にはレーヨン糸の方がポリエステル糸に比べテ、光沢感があると言われていますが、キングス
ターの糸は独自の技術により深みのある色合いとポリ糸上回る光沢感を実現。
・パールヨット
素材:レーヨン糸とポリエステル糸の両方を展開しているが、メインはレーヨン糸。
糸番手とカラー展開
レーヨン100%:50D/2 10色、75/2 746色、120D/2 755色、200D/2 483色
ポリエステル100%:75D/2 330色、120D/2 330色
※参考までにレーヨン糸50D/2は業界最細の刺繍糸となります。
特徴・強み:レーヨン100%の糸に強みがあります。具体的には「スレン染色」という染色方法を採用していることです。一般的には「反応染料」を用いた染色方法がほとんどですが、それに対して、スレン染料は日光や洗剤による色落ち、褪色が最もしにくい染料と言われていて、染色方法の中でも洗濯堅牢度が非常に高いことが特徴です。
一般的に洗濯堅牢度はレーヨンよりもポリエステルの方が高いのですが、この「スレン染色」はポリエステルに近いレベルまで染色堅牢度を引き上げることが出来ていると言われています。染色堅牢度を高めながら、レーヨンの良さである発色性と光沢感を兼ね備えた糸になっているということです。
また、工業用ミシン刺繍糸でレーヨンを染めて販売しているのは世界を探してもパールヨット1社だけです。メーカー担当者からの説明では、スレンを使い700色近く色再現が出来るところは他にないとのことでした。
・ウルトラポス
素材: レーヨン糸とポリエステル糸の両方を展開しているが、メインはポリエステル糸。
糸番手とカラー展開
ポリエステル100% 75/2と120D/2 550色
レーヨン100% 75/2と120D/2 451色
特徴・強み:ブラザー純正ミシン糸として採用されているため刺繍糸としての実績と安心感。高い光沢感・高い洗濯耐久性。
・ミサイルツル
素材:レーヨン糸とポリエステル糸の両方を展開しているが、メインはレーヨン糸。
番手とカラー展開:75d/2 672色、120d/2 672色、120d/2 700色、150d/2 127色
特徴・強み:ポリエステル100%は敢えて光沢を抑えたマット糸と光沢感のある糸の2種類を展開している。また、金銀糸の種類が多く、ラメの入った糸の種類も豊富です。その他レーヨン糸(単糸)を染色してから撚糸をした杢糸など他社にはない特殊な刺繍糸をがあることも特徴です。
・エンゼルキング
素材:レーヨン100%、ポリエステル100%、ナイロン100%、ポリエステル78%・ナイロン22%、
アクリル100% など多種多様な素材の刺繍糸を展開カラーバリエーション豊富なレーヨン糸が
メイン。
糸番手と カラー展開レーヨン100%:75/2 1283色、、120D/2 1322色、150D/2 166色
ポリエステル100%:75D/2 538色、120D/2 568色
ポリエステル100%:ラメメタリック糸 280D 30色
ポリエステル78%・ナイロン22% 190D 166色
アクリル100%:192色
特徴・強み:糸のバリエーション(糸の種類、素材種類の多さ)。特に金銀糸については太さの種類、カラバリともが他社に比べて豊富。メインのレーヨン100%刺繍糸については反応染料を使用し、レーヨン素材としては高い堅牢度があることが特徴。また、1283色というカラーバリエーションは他社と比べて圧倒的に多い。
ちなみに、アルファユニではパールヨットレーヨン糸をメインとして使用しています。
使用している理由は、以下の通りです。
■発色性の良さと光沢感の高さで仕上がり綺麗
■ポリエステルに近い洗濯堅牢度の高さ
■しなやかな糸なので、現場スタッフが刺繍作業を行う上で糸の取り扱いがしやすい
現在、アルファユニはオリジナルスクラブの刺繍を行っております。納品した後、リネンサプライヤーによる洗濯がされていると思いますが、刺繍糸の色落ちに関するクレームはほぼありません。
また、仕上がりの良さについてもレーヨンの発色性と光沢感がよりデザインを引き立てることでお客様にご満足いただけています。
どうでしたでしょうか。刺繍糸についてご理解いただけましたか。今後も、色々な刺繍糸を試していきながら、デザインやお客様のニーズ、使用用途に合わせたベストな刺繍加工とベストな刺繍糸をお客様にご提供していきたいと思っています。