刺繍の見た目が変わる?生地の違いと刺繍の差
刺繍の見た目はアイテムで変わる!
刺繍加工を入れたはいいけど、いざ届いてみたらイメージと少し違う気がする。それが正しいのか間違っているのかもわからない…。
実は刺繍を入れるアイテムによって見た目は少し変わるんです!スクラブ、Tシャツ、ドライTシャツetc…。実際に刺繍をしてその仕上がりを比べてみました。
早速仕上がりを比べる…その前に
どうして見た目が変わってしまうの?
刺繍なんて糸を生地に縫っているだけなんだから、どんなアイテムでもだいたい同じような仕上がりになるはず…と思われるかもしれません。たしかにすべてのアイテムで条件が同じならそう言えるかもしれませんが、実際には各アイテムの生地の特徴の違いが見た目に影響を与えてしまいます。
まずはこの、見た目に影響を与える特徴を見ていきましょう。
生地の伸縮性
どれだけ生地が伸び縮みするのかを表す伸縮性。ストレッチ性とも言い換えられます。
刺繍の見た目に影響を与える最も大きな要因の一つです。
刺繍をするときは、ミシンにセットするための刺繍枠をアイテムに取り付ける必要があります。刺繍枠を取りつけるときに枠の内側の生地がヨレていると、生地を折り込んでしまったり、完成した刺繍自体もヨレてしまうことも。それを防ぐために、枠の内側の生地をある程度張っておく必要があるのですが…。
伸縮性が低い生地は刺繍枠をはずしたときに生地がもとに戻ろうとする力も弱いため、刺繍に与える影響は大きくありません。一方、伸縮性が高い生地はもとに戻ろうとする力も強く、刺繍自体がしぼんで見えてしまうことがあります。
アルファユニでは伸縮性が高い生地に刺繍をする際、刺繍枠の内側の生地の張りをできる限り抑えるようにしています。それでも刺繍枠の取りつけが手作業であることや、同じアイテムでも生地に細かな違いがあることによってまったく同じ条件にすることは難しいため、どうしても多少の見た目の違いが出てしまいます。
生地の硬さ(密度)
生地の硬さも刺繍の見た目に影響を与える最も大きな要因の一つです。ハリ感の強さとも言い換えられるかもしれません。
生地目の密度が関係します。極端な例になりますが、スクラブとセーターを想像してみるとわかりやすいかと思います。スクラブは生地目が小さく、密度が高く詰まっているため肉眼で見ることは難しいです。一方で、セーターの生地目は大きく密度が低いため簡単にみることができます。
刺繍は上糸と下糸という2本の糸で生地を挟み込むように縫っていきます。上糸が表面に見える糸、下糸が裏から支える糸です。生地目の密度が高く硬い生地は2本の糸に挟まれてもあまり沈み込むことはありません。
反対に、密度が低く柔らかい生地は刺繍糸が沈み込んだり、下糸が表面にでてきてしまうことがあります。
ミシンの「糸調子」というものを変えることである程度は改善できますが、こちらもまったく同じ条件にすることはできません。柔らかい生地に刺繍をする場合は、見た目がイメージと少し変わってしまうことがあります。
ここまでは生地の特徴から刺繍に与える影響を見ていきました。
次は、どの生地がどんな特徴を持っているのかを見ていきましょう。
布帛生地とニット生地って?
洋服の生地は大きく分けて「布帛(ふはく)」と「ニット」の2種類。「ニット」は聞いたことがあっても、「布帛」はあまり耳馴染みがない言葉ではないでしょうか。
布帛
布帛とは縦糸と横糸を交互に織って作られる生地のことを言います。この“織って作られる”という部分がポイント。必ず2本以上の糸を使って作られる「織り物」が布帛です。生地目が格子状になっています。
布帛生地の特徴・型崩れしにくい
・通気性が低い
・密度が高い
・伸縮性が低い
・縫いやすく、刺繍がイメージ通りの仕上がりになりやすい
布帛生地を使った主なアイテム
・スクラブ
・白衣
・シャツ
・デニム
生地を織る素材(糸)にもよりますが、基本的には上記のような特徴があります。この中で特に重要なのが“密度が高く伸縮性が低い”という部分。伸縮性が低いのは着用する上ではマイナスと思われるかもしれません。しかし、ここまで紹介したように刺繍をするときには大きなプラスです。
織り方によって布帛生地にもさまざまな種類があるため、一概に「布帛生地を使っているすべてのアイテムでイメージ通りの仕上がりになりやすい」とは言えませんが、一般的にはニット生地よりも刺繍に適している生地とされています。
また、上記で挙げたアイテムのなかにはニット生地を使って作られているものもあります。ご購入の際には、「このアイテムはこの生地」と決めつけずに確認をしたうえで加工を選ぶことをおすすめします。(ニット素材を使っているスクラブや白衣に関しては、商品名や商品詳細の素材項目に“ニット”と書いてあることがほとんどです)
ニット
ニットというとセーターやマフラーのようなアイテムが思い浮かびませんか?ニットとはこのようなアイテムのことではなく、アイテムに使われている生地のことなんです。
ニットは糸でループを作りながら、編んで作られる生地のことを言います。この“編んで作られる”という部分がポイントで、「織り物」が布帛なら「編み物」がニット。1本の糸で編み上げられているものも少なくありません。生地目はループが連なったような形になっています。
ニット生地の特徴
・型崩れしやすい
・通気性が高い
・密度が低い
・伸縮性が高い
・縫いにくく、刺繍がイメージ通りの仕上がりになりにくい
ニット生地を使った主なアイテム
・Tシャツ
・ポロシャツ
・セーター
・パーカー
こちらも生地を編む素材(糸)によって多少の違いはありますが、おおむね布帛生地と反対の特徴を持っています。柔らかく伸縮性が高いためフィット感があり着心地の良い生地で、特に普段使いしやすいアイテムによく使われています。意外と思われるかもしれませんが、Tシャツやポロシャツもニット生地で作られているんです。
刺繍をするうえでは“密度が低く伸縮性が高い”という部分がやはりポイントに。一般的にニット生地は布帛生地よりも刺繍に不向きな生地とされています。Tシャツなど生地目がある程度細かいものなら刺繍をすることは可能ですが、イメージ通りの仕上がりにならないことも。生地に使われている素材によってもその硬さは異なるため、ニット生地のアイテムに刺繍を入れる場合は特に素材を意識して選ぶ必要があります。
布帛とニット、それぞれの生地の特徴を見てきました。特に刺繍と相性がいいのは密度が高く伸縮性が低い布帛です。
この点を踏まえて…。お待たせしました!
実際にさまざまなアイテムに同じ刺繍をしてみましたので比べてみましょう。
仕上がりの差を比べてみる!
スクラブ
MIZUNOの人気スクラブMZ-0018に聴診器のワンポイント刺繍と続き文字の文字刺繍を入れました。同品番はポリエステル100%の布帛生地を使い作られています。アルファユニが最も得意とするスクラブへの刺繍で、かつ最もオーソドックスな仕上がりです。この刺繍を基準として他のアイテムと比べていきます。
Lepiusのスクラブmsc003。商品説明に「鹿の子編トリコット素材」との記載があるためニット生地を使っていることが分かります。ポリエステル100%で、手触りが非常に柔らかいスクラブです。
Tシャツ
タフなつくりでプリントTシャツとしてもおすすめのTRUSS OE1116 Tシャツ。綿100%のニット生地を使っています。6.2オンスとTシャツとしては少し厚めの生地が特徴です。
ドライTシャツ
チャンピオンTシャツとしても人気のUnited Athle 5900 ドライTシャツ。厚さ4.1オンスと薄め、ポリエステル100%のニット生地を使っています。
ドライTシャツはメッシュのつくりが一般的で、総じて生地の密度が低く柔らかいのが特徴です。
ドライポロシャツ
豊富なカラーバリエーションでチームウェア製作におすすめのglimmer 00302-ADP ドライポロシャツ。厚さ4.4オンス、ポリエステル100%のニット生地、メッシュのつくりで上記のドライTシャツと似た生地の質感です。
BURTLEの105 ポロシャツとも比べてみましょう。こちらもポリエステル100%のニット生地で作られています。厚さの表記はありませんが、00302-ADPと大きな差はありません。
同じドライポロシャツというカテゴリのアイテムでも、手作業によって生じる軽微な差や少しの生地の違いによって同じ仕上がりにはならないことが見てとれるかもしれません。
ブルゾン
すでに廃番となっているアイテムではありますが、ナイロン100%の布帛生地を使っているブルゾンに刺繍をしました。ウインドブレーカーのようなシャカシャカとした手触りと引き裂きに強い丈夫さを感じさせる生地です。
ネックウォーマー
チームオーダーで人気のTRUSS FNK-630 ネックウォーマー。ポリエステル100%のフリース素材を使ったニット生地で作られています。
フリース素材は起毛が特徴の素材です。刺繍をすると生地に埋まったような仕上がりになります。
ツイル(ワッペン)
ワッペンに使われるツイル生地。一般のアイテムよりもさらに糸の密度が高い織り物で布帛生地に分類されます。伸縮性はありませんが、ここまでのどの生地よりも丈夫さを感じさせます。
一般的にニット生地を使ったアイテムへの刺繍は難しく、アイテムに直接刺繍をすると仕上がりにばらつきが出やすいとされています。その点、ワッペンは仕上がりにばらつきが出にくいため、特にデザインにこだわりたい場合はワッペンを作製して取り付ける加工がおすすめです。
いかがでしたでしょうか?
実際に比べてみると仕上がりの違いも分かりやすいかと思います。このような違いをお知らせすることで、アルファユニとしてもイメージと実際の仕上がりのギャップをできる限り減らせたらと思っています。
それでもやっぱり仕上がりが不安…そんなときは
とはいってもやっぱり画像だけではわかりにくいし、そもそも自分の刺繍したいデザインじゃないからどこまでこの情報があてになるかもわからない。そう思いませんか?
そんなときにはサンプルの作成がおすすめ!
お見積りやご注文の際にご相談ください。