直刺繍加工と刺繍ワッペン加工の違い

直刺繍加工と刺繍ワッペン加工の違い

直刺繍による加工と刺繍ワッペンを使った加工はどちらも刺繍の技術を使ったものです。それぞれにメリットとデメリットがあり、アルファユニではデザインや取りつけるアイテム、加工位置などによって使い分けをしています。
とはいっても、両者の違いはなかなかわかりにくいもの…。
今回は、直刺繍と刺繍ワッペンの違いを、

〈特に伝えたい5つのポイント〉

  • 製作方法
  • 特徴とメリット・デメリット
  • コスト
  • 耐久性
  • 修復性

から見ていきましょう!

1. 製作方法

直刺繍

アイテム(生地)に直接針で糸を打ちこんで刺繍する方法。刺繍用の機械(刺繍ミシン)を使っておこなう。

直刺繍 製作の流れ

1.アイテムに直接刺繍ミシンで糸を打ち込みます。

2.完成!

刺繍ワッペン

アイテムとは別のワッペン用の生地に刺繍ミシンで刺繍をおこない、それをデザインの形に合わせてカットしたパッチ状のもの。ワッペン用の生地で代表的なものとして、エンブクロス、ポリエステル(ツイルまたはサテン)、フェルトなどがある。

刺繍ワッペン製作の流れ

1.ワッペン用の生地に、刺繍ミシンで刺繍をおこないます。

2.刺繍ミシンでの刺繍が終わったら、デザインの形に合わせてカットします。

3.刺繍ミシンで、アイテムに縫い付けて完成です。マナティーの背景の青い部分がワッペン生地です。

【ツイルを使用した刺繍ワッペン】

光沢の無いマットな生地

【エンブクロスを使用した刺繍ワッペン】

光沢のある生地

2. 特徴とメリット・デメリット

直刺繍

【メリット】
縫い目の上や2枚剥ぎ、中綿生地など段差や厚みがある生地でも刺繍枠を取りつけることができれば加工ができる。
●アイテムの生地と糸が一体になるので自然な仕上がりになる。

【デメリット】
●アイテムに直接刺繍をするため、位置と大きさが限定される
刺繍をおこなうためには、アイテムをミシンにセットするための“刺繍枠”と呼ばれる枠を取りつける必要があります。機械にセットできる刺繍枠の大きさや形状は決まっています。

刺繍をおこなうアイテムの位置によって取りつけられる刺繍枠の大きさは異なります。
袖のように細く筒状になっている箇所には、筒状になっていない胸よりも一回り小さいサイズの刺繍枠しか取りつけることができません。
袖用の刺繍枠は円形です。刺繍できるデザインも円形にうまく収まるものに限定されます。

デザイン刺繍のポイントを見る

袖用の刺繍枠

また、胸ポケットには刺繍ができません。
ミシンの構造上、ポケットの生地だけを縫うことができず下の身頃生地まで縫い合わせてしまうため、ポケットが使えなくなってしまいます。
ミシンは“上糸”と呼ばれる糸を針で生地に通し、“下糸”と呼ばれる糸と絡ませることで刺繍をしていきます。

そのため、上糸と下糸のあいだにある生地をすべて縫い合わせてしまいます。下糸が入っている“釜”という部分をポケットの中に入れてミシンを動かすことができないため、胸ポケットをつぶさない形で刺繍をすることはできません。

●生地の違いで仕上がりが変わることがある。
同じデザインの刺繍であっても生地の厚さや伸縮性、組成の違いによって仕上がりが少しかわります。特に薄い生地や伸縮性が高い生地の場合には、刺繍した糸の引っぱる力でデザインの形がゆがむことや生地が縮まることで引きつった仕上がりになることがあります。
※アルファユニでは、薄く柔らかい生地でも芯地の厚さや強度を上げて対応することでゆがみを少なくする工夫をしています。

刺繍ワッペン

【メリット】

●刺繍と相性のよい生地に刺繍してワッペンを作るため、取りつけるアイテムの生地に影響されない。また、取りつけるものの幅が広く、布用ボンドを使用すれば手軽にいろいろなものに取りつけられる。

●まとめて製作することでコストを抑えることができる。製作したときに使い切らなくても、在庫にしておくことで好きなアイテムに好きなタイミングで取りつけができる。

●ワッペン用生地の中でもポリエステルツイルやサテンは表面がフラットで生地目が細かく整っているので、繊細なデザインでも再現しやすくきれいに仕上がる。

【デメリット】

●複雑な形のデザインには不向き。
複雑な形のワッペンは縫いつけが手作業となります。そのため、縫いつけに時間がかかる=縫いつけ作業代が高くなります。また、ワッペンの形があまりに複雑だと縫いつけができない場合もあります。

●大きいデザインにも不向き。
ワッペンは直刺繍とくらべて重みがあります。背中などに大きなデザインを入れる場合、ワッペンだと重たく着心地も悪くなります。また、通気性がなくなってしまうため、特にTシャツやポロシャツといった軽衣料には向きません。

●アイテムの生地になじまない。
ワッペンをアイテムの生地の上に縫いつけるので、生地となじまず厚みがでます。特にエンブクロス生地を使ったワッペンは硬く、袖に取りつけた場合に違和感が残ります。

3. 耐久性

直刺繍

アイテムの生地と糸が直接結びつくため耐久性が高い。

刺繍ワッペン

ワッペン生地と糸が直接結びつき固定されるため、ワッペン自体の耐久性は高い。ただし、取りつけ方法によってアイテムとの接着強度がかわる。
通常は刺繍ミシンを使い、ワッペンをアイテムにステッチで縫って取りつけます。ワッペンのデザインを作成するときには、縫い代(ステッチが走るすきま)を2mmほど開けておく、もしくはデザインの縁取りを3mm以上に設定して縁取りの上を縫う、というように取りつけに必要となる部分を含めて作成する必要があります。
ホットメルト(熱で溶けるのり)での圧着は強度が低く、ワッペンがはがれやすくなります。

4. コスト

直刺繍

アイテムの仕様や刺繍をする位置、デザインによってコストがかかります。
刺繍をするアイテムひとつひとつに刺繍枠を取りつける手間と時間がかかるため、その時間がコストに反映されます。また、アイテムの仕様や刺繍をする位置によっては加工時間が通常よりも長くなり、こちらもコストに反映されます。
その他、ベタ表現の面積が広いデザインを表現する場合には針数が増えるのでコストがアップします。円形の白ベタを背景にして、その上にイラストをのせたようなデザインがその代表例です。
刺繍をするアイテム自体が白であれば、そのカラーを活かすことができるためベタ部分に糸を打ちこむ必要はありません。一方、白以外のアイテムに刺繍をする場合はベタ部分をすべて白色の糸で打ちこまなければいけません。糸を打ちこむ範囲が広くなるため刺繍代が高くなります。

刺繍ワッペン

一般的には直刺繍よりもコストが低く抑えられます。
ワッペン生地のカラーをそのままデザインの一部として使えるため、糸を打ちこまずにカラーの表現ができて針数を節約できます。直刺繍だとコストが上がるベタ表現のあるデザインも、ワッペンならコストを抑えて製作できます。

また、大判の枠にワッペン生地をセットしてまとめて刺繍ができるため、製作の効率が良くなります。デザインによって多少前後しますが、直刺繍よりもコストが低く抑えられます。

ワッペンの方が一般的にはコストが抑えられると言われていますが、デザインによっては直刺繍のほうが安く仕上がる場合もあります。
刺繍するアイテムの生地色をうまく使って、デザインの塗りつぶし部分を抜きにするなど工夫をすると針数が抑えられます。また、ワッペンはカット・縫いつけの作業代がかかる一方、直刺繍にはそれらがありません。

5. 修復性

直刺繍

一度刺繍された部分の修復は難しいです。
アイテムに直接糸を打ちこんでいるため、修復するには糸を切ってほどき、抜いていく必要があります。糸が複雑に絡んでいるところもあり、糸が打ちこまれていた部分には跡が残ります。

刺繍ワッペン

つけ替えることできるため修復は簡単です。
できあがったワッペンをアイテムに取りつけているため、はずして交換をすることができます。ワッペンの在庫があれば作りなおす必要もありません。

万が一刺繍を失敗した場合、直刺繍はアイテム自体のロスにつながります。一方で、ワッペンはワッペン生地のロスだけで抑えられます。

まとめ

ここまで見てきた5つのポイントから、刺繍するデザインやアイテムの仕様、素材、刺繍位置などの要件に応じて直刺繍にするか刺繍ワッペンにするかを選択することが重要です。
アルファユニでは、デザインや予算感に応じてより適した加工の方法をご提案させていただいております。ぜひ一度ご相談ください!

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